「漢字教育」に力を入れたことで、学校全体の雰囲気まで変わった。

公立小学校教諭 岡 篤 さん (兵庫県在住)
2013年「白川静漢字教育賞」最優秀賞受賞

授業では白川文字の字源を教える工夫も。

児童・生徒の漢字力向上には学校全体の取り組みが不可欠です。以前勤めていた学校でそのことを感じましたので「校内漢字検定」を設け、漢字学力調査(4月)や漢字月間(9月・2月)を通じて当該学年と前学年の漢字習得に力を入れました。基本学習は書き取りですが、白川文字学の字源を紹介して“漢字の関心を高める授業”も行い、また検定は易しい問題で生徒が自信を持てるようにしました。結果、6年生の例では、初年の正解率50%(5年漢字)が3年後には75%まで伸び、数字に比例して学校全体の雰囲気も落ち着くようになりました。

生徒たちの間で前向きな言葉が出始めた。

数字が示す学力の伸長は確かに客観的な指標になりますが、漢字教育に力を入れたことで子どもたちの表情や話す内容まで変わったのは、教員の間で大きな驚きでした。もちろん漢字が苦手な子もいますから、全員がすぐに「校内漢字検定」に合格できるわけではありません。しかし、当該学年の漢字ができないからダメではなく、下の学年の漢字なら合格できるといった仕組みも作ることで、みんなが“達成感”を得られるようにしました。すると生徒の間で「〇〇ちゃんはどれだけ合格したの?」「今年もやるぞ!」といった前向きな言葉が飛び交い始めました。

“達成感”は子どもの自制心までも育む。

私が漢字教育に力を入れ始めた頃に勤めていた小学校は、実は集中力や学力の面でちょっとしんどい学校でした。何とかしなければとの思いで音読や計算などにも力を入れましたが、今振り返ると、成果があった取り組みの中心はやはり漢字でした。少し大げさな言い方かもしれませんが、漢字を勉強して“できる”ようになることは、国語や日本語ができる過程にもつながっていると感じています。自らの努力を本人が顧みることで行動や計画を見直すことにもなりますし、そこから次のステップに進んで得た“達成感”は、国語力だけでなく、一人ひとりの自制心も育んでいったと考えています。